「メトロコマース事件」から見る退職金制度の今後とは

2020年10月13日、最高裁で「退職金」に関する正社員と非正規社員の待遇格差の是正を求める訴訟の判決があった。
この訴訟は、東京メトロの子会社「メトロコマース」で駅の売店の販売員として働いていた契約社員が、正社員との不合理な労働条件の格差を理由に「退職金」の支払いを求めた裁判で、『無期雇用契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものには当たらない』として、最高裁は訴えを退ける判決を下した。
なお、今回の判決は必ずしも「非正規社員には退職金を支払わなくてよい」としているものではない。事実、判決文においても『両者の間の労働条件の相違が退職金の支給に係るものであったとしても、それが法律で禁じている不合理と認められるものにあたる場合はあり得る』としているからである。

―「昭和の退職金」から「令和の退職金」への変化の時代か?―
今回の「メトロコマース事件」判決のケースでは、正社員には配置転換を命じられ、正当な理由なくそれを拒否できないことが判断理由の一つとなっている。
つまり、正社員の場合には会社の命令に従い、様々な部署や業務に配置転換しながら経験と職務遂行能力を高めていくという「メンバーシップ型」雇用の考え方がベースにあり、これまで実際に長期にわたって勤務し能力を身につけて責任ある職務を遂行した社員に報いるために退職金制度を設けているが、これが今までの「昭和の退職金」制度である。
しかし、我が国において少子高齢化や労働力人口の減少という状況や経済社会情勢が大きく変化する中で、社内のジョブローテーションだけで人的資源を最大限に活用するという考え方が限界に達し、人材の多様性確保といった観点から「メンバーシップ型」雇用の弊害が言われ、「ジョブ型」雇用が注目されてきている。
「ジョブ型」雇用(今回のケースでいう契約社員に近い形)では、あらかじめ職務を明示したうえで、その職務の役割や責任の大きさに応じて処遇を決めるという考え方であり、そ
の時々に必要とされる職務に対して適正な対価を支払うという考え方にシフトするとすれば、退職金の性質や目的も自ずから変化する。これが「令和の退職金」であると言える。
以上の状況で、正社員にのみ退職金制度が適用されることの是非については、今回の判決と同じような理由に基づいて判断することはできなくなるのではないかと思える。
つまり、今回の判決は、「昭和の時代」の人材マネージメントや退職金のあり方を例にとった判決であり、今日の「令和の時代」に求められる人材マネージメントや退職金のあり方にそのままあてはめることは困難な時代を迎えたものと言えるのではないかと考える。

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